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|| LIVE REPORT ||

【CD レビュー】METAL RESISTANCE by BABYMETAL

[タイトル] METAL RESISTANCE
[アーティスト] BABYMETAL
[発売年] 2016
[レーベル] トイズファクトリー

前作のセルフタイトルの 1st アルバム “BABYMETAL” で、既存の「メタルの美学」を粉砕し、世界中で賛否両論の大激論を巻き起こしたかと思えば、神バンドを従えて一気に世界に足をかけてしまった少女三人組のセカンドアルバム。
彼女達については既に説明不要な部分もかなりあるので、Babymetal って何?という人は、YouTube でも見ていただくとして、まだこの 2 枚目を聴いていない人と、一度聴いてなんだこりゃ?と思った人向けに、曲ごとを含めたレビューを、おれの見解を含めて述べていこうかなと思う次第。
だいたいからしてだね、曲名を見て曲調を連想できたとしたら、そりゃどうかしてると思うんだよね(笑) おかしいでしょ。曲名が「ヤバッ!」とか「GJ!」とか。まあそのへんも追々書くとして、とりあえず始めましょうか。
 
<#1 Road of Resistance>
Dragonforce の Harman Lee と、同じく Dragonforce のSam Totman の両ギタリストがギターで参加したという事前の触れ込みで、速い曲なんだろうな~と思ったら案の定で(笑)、BPM でいうと 205 くらいかな?と激速チューン。世の中にはさほど速くないけど速く聴こえる曲というのがあるんだが、この曲は物理的にテンポ設定が速い。全体的には、Dragonforce 臭漂うメロスピ調。
ただし、異様に速いというか、音数の詰めこみ具合が尋常でない。しかし、ボーカルメロディーの譜割りで適度な快速感で聴けるようになっているあたりさすがの一言。定番かつドラマチックな展開は、これから始まる Babymetal ワールドの幕開けとしては最高と言える。

 
<#2 KARATE>
PV で観た人も多いかもしれない、欧米人が喜びそうなタイトル(笑)の 2 曲目。
1 曲目から一転してヘヴィなイントロから始まり、続いて少女声のコーラスが入って、もうトラッドなメタル観がひっくり返される。この YUI-METAL と MOA-METAL による少女声のコーラスは Babymetal の特徴の一つで、今まで欧米のメタルが採用することを拒否していた「少女性」を大胆に取り入れたものなんだが、それゆえに登場当初は賛否両論だったわけだ。しかし今や、この二人のコーラスなくしては、Babymetal たり得ないと言う人もいるかもしれない。とは言ってもメインボーカル SU-METAL もまだ 18 歳だけどね…。

 
<#3 あわだまフィーバー>
The Mad Capsule Markets のメインコンポーザーであった Takeshi Ueda による 3 曲目。そういえばこのドラムベース的なイントロは “MAD” 臭がするな。そしてこのヘヴィなのに爽やかな感じは、“MAD” の後期の名曲 “Good Girl” あたりに通じるものがあるような気もする。サビの合いの手として入るコーラス「オーイェイ」がちょっと懐かしくってツボ(笑)
歌詞の意味なんか考えないでとにかく楽しんだもの勝ちな曲。
 
<#4 ヤバッ!>
もう曲名書いてて恥ずかしい。なんだこれ(笑)。この裏の 4 つ打ちな感じは、最近のエモコアあたりを意識した感じなのかな?まあ B メロ以降はドメタルなわけですが。アレンジの YUPPEMETAL こと YUYOYUPPE の腕が冴えて、ピコリーモテイストがうまいこと出過ぎずに入っていて、ピコだったりハードコアだったりメタルだったりあっちこっち行ったり来たりして、それでいてトータルで SU-METAL の声が冴えるという不可思議な展開な曲に仕上がっている。
 
<#5 Amore - 蒼星 - >
アカツキに続いて蒼い星なんですかね。次は白い奇蹟ですかね。あ、それは聖飢魔II か。
非常にきれいなメロスピチューン。深夜アニメのテーマソングっぽい。
 
<#6 META!メタ太郎>
お願いだからこの曲から Babymetal に入る人がいないことを祈る。飛び道具にもほどがある。”META” と言えば、メタい = 内部事情を暴露する、ということで、何かしら歌詞で問題発言(笑)があるのかと思えばそうではない。ちょっと残念。それにしてもこの歌詞はなんかバックグラウンドがあってのことなのだろうか。もし何か付帯情報を持っている人がいたら、おれが教えてほしいくらいだわ。ドラムパターンの執拗なくり返しで曲の中核をなすという意味では、Queen の “We Are The Champions” とか Slikpnot の “The Blister Exists” などが類似性として挙げられる。古くは Ravel の “Bolero” とかね。
 
<#7 シンコペーション>
シンコペーションと言えば、音楽の技法のひとつで、ざっくり言えばアクセントをずらすことで意外性や疾走感を出したりするのに使われる。作曲において、もっともわかりやすく効果が表れる技法のひとつと言える。90 年代の V 系の曲にはこれが頻繁に取り入れられていて、あの独特のリズム感を形づくっていた。音楽の技術がそのまま曲名になると言う意味では、Perfume の “ポリリズム” などがあるが、振付師が Babymetal と Perfume と同じという関連性は、この曲にはあるのだろうか、という余計な思いを巡らせてみる。確かに言われてみれば、このシンコペーションが頻用されていて、全編でほぼ 1-2 小節に一度の割合で確認できる。この曲の何がいいって、ギターのリフがカッコいい!んだよね。リフとしても良いし、音も素晴らしい。それでいて A メロでギターが消えてベースの 8 分のベーシックなサウンドが前に出てくるあたり、意外なほど定番アレンジ…というよりレトロさすら漂う。メロディーも全体的に懐かしい感じだしね。そのせいなのか、EU 盤では
“From Dusk Till Dawn” という曲に差し替えられている。
 
<#8 GJ!>
歌詞ではアルファベットで記載されている部分も、完全にカタカナで発音しているのが逆に徹底していて素晴らしい(笑)。無邪気な女の子の楽し気な声でサビを執拗に繰り返すことで、ある種の狂気を生み出している。前作の “おねだり大作戦” 的な位置づけと思われる。今作で一番ラウドなノリの曲かな。
 
<#9 Sis. Anger >
この曲のイントロは凄まじくブルータルでカッコイイ!完全にデスメタルなリフが全曲の大きなリズム感を打ち消す!
デスメタルに乗せてブルータルな歌詞を中高生の女子が軽快に歌うとこうなる。アニマル浜口のセリフまで登場してもう完全にカオス。
 
<#10 NO RAIN, NO RAINBOW>
前曲でブラストかました後に、ピアノバラード!ニヤニヤとクスクスが止まりません。珍しくラブソングとも取れる歌詞の曲。ギターソロが完全に X JAPAN です本当にありがとうございました。まあもともとX 風のギターソロはよく出てくるけど、今回は ”TEARS” かな?元ネタ探しができるのもBabymetal の楽しみの一つなのかもしれない。
 
<#11 Tales of The Destinies>
歌詞に 「THE ONE」が出てくるということを考えると、この曲と次の “THE ONE” で連携のある組曲的と考えるのもいいかもしれない。
が、次曲が正統派なロックバラードであるのに対して、こちらはプログレフレーズあり、変拍子ありの変態曲。よくこんなの歌えるな。前作で言うと、”悪夢の輪舞曲” 的な位置かな。
Destrage 風の劇的な展開に、途中 Dream Theater の “Instrumedley” で Jordan Rudess が弾きそうなトリッキーなピアノフレーズ (または “The Dance Of Eternity” 風)も入ったりして、何が何だかわからなくなった後に、結局疾走感のあるサビでシメ、という人を食うにもほどがある難解な構成。アウトロは事実上次曲のイントロのそのまたイントロとも言える。
 
<#12 THE ONE>
終局を告げる壮大なミドルバラード。歌詞の内容は Arch Enemy の “Nemesis” に近いけど、あれよりはもっとずっと穏やかで純粋な歌。ここまでほ歌詞はほぼ全編日本語で、アルファベットはあくまでオマケであったが、この曲は初めての英詞を多用し、日本語詞と英詞が並立したような構成となっている。
一聴すると定番の楽曲に聴こえるが、ボーカルを追いかけるコーラスや、各所のキメなどのフックが効いていて、飽きさせない構成となっている。最後はフェイドアウトですんなり終わり、三枚目聴きてえ!とプルプルするか、もう一度聴こう!とウハウハするかの選択ができるようになっている(笑)
なお、EU 盤にはこの曲のフル英語版が入っているので、より楽しみたい人は、そちらも聴いてみられたし。

 
 
<<総評>>
なぜ Babymetal がメタルの特異点かと言えば、そもそもアイドルとメタルの融合というコンセプト、正式メンバー (?) は少女三人のみ、そのパートはボーカルとダンスのみでバンドは外注、異様にシンクロ性とキレの良いダンス (というかメタルでダンスというのはそれまで有り得ない存在だった)、演出として表情まで使う、メロイックサインを文字って影絵のキツネでフォックスサインと言ってみたり、とまあ色々あるわけだけど、「本国」からの視点で考えると、二つある。
 
まず、何と言っても、日本的要素とメタルの融合が抜群に上手いと言う点を挙げねばなるまい。根源的には制作側の力量ってことになっちゃうのかもしれないけれど、それを完璧にステージで再現させる演者三人の力量があっての話。アカツキでのキツネのお面を使った演出だったり、Catch Me If You Can (前作収録) でかくれんぼをテーマに歌ってみたりと、とにかく「ジャパン」な要素に満ちている。ついでに神バンドは神と言いながら死装束なのは、日本では死ねばみんな神様になるという日本的思考のあたりから来てるのか、それともネットスラングの「神」から来てるのか。
 
二つ目は、基本的に歌詞が日本語だということ。本作の “THE ONE” でついに英詞がフィーチャーされたとは言え、まあせいぜい半分程度 (EU 盤では全編英語だが)。歌詞は、日本語の、それも口語に満ちている。ひょっとしたら同じ日本人でも上の世代の人にはわからないかもしれないくらい、今の日本語の口語でできている。
そしてさらに言うならば、これを世界中のフェスでやり倒して、ついにウェンブリーでワンマン公演まで行ってしまった!これを日本語でのグローバリゼーションと言わずして何と言う。
 
(日本から見た) 海外公演に来る現地の人は、日本語の歌詞の意味なんて、まあほぼ全部わからないわけですよ。それでもイギリスで 1.2 万人来る。ネットでは YouTube の動画が4500 万回視聴される。歌詞の意味わからないだろうはずなのに。
そういう意味でも「メタルの歌詞は英語じゃなきゃダメ」論に一石を投じるどころか、実力で粉砕してしまった感はある。逆に、ハナから英詞だったらここまで行ったか?とすら思う。
 
翻って、単純に作品としての音源だけを見ると、前作ではまだレコーディング時に 13-4 歳だった曲もあったので、声がまるで子供声の曲があったが、今回はメインボーカルに一貫性が出たし、何より歌唱力の成長には目を見張るものがある。コーラスの二人も主張が感じられる。楽曲的には、幅広いジャンルを横断的に採用しながらも、芯のあるメタルサウンドと流麗なボーカルラインで、 12 曲全く飽きずに聴ける名作を作り上げた。
 
ヘンテコだけど名作!と素直に称賛を送りたい。
 
実は前作を聴いた後、これを超えるクオリティの二作目って大変だろうなと思ったことがあったのだが、杞憂であったのは嬉しい驚きだ。制作側は死ぬ思いをしたかもしないが。
 
ちなみに、この歌詞を英訳ってどうやるんだよおい、と思ったので、EU 盤も買ってみたのだが…、歌詞カード入ってなかったよー(笑)
 
というわけで、引き続き彼女らの快進撃と三枚目に期待大!であります。
 
 

レビュー:JUN (XECSNOIN)

■プロフィール
【JUN】 ヘヴィメタルバンド XECSNOIN (ゼクスノイン) のベーシストとして 2001 年から音楽シーンに参入する。現在は Sirent Screem、MaKORN にて活動中。00 年代後半より SNS 上でで個人名義でコラム執筆を開始。2015 年から、物書きを本格的に始める。在独経験を基にした独自の観点で、音楽はもとより、比較文化論から政治経済に至るまで多岐にわたり論評を展開中。その独特のわかりやすさ重視の文体が好評を博している。趣味はモータースポーツ在宅観戦。 
 
※個人ブログ  ⇒ 『長文御免』