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|| LIVE REPORT ||

【ライブレポート】nonLinear Metal DynamiX EXTRA Vol.3 in CLUB CITTA'

・RYUMEI Presents
 nonLinear Metal DynamiX  EXTRA Vol.2
・2016年11月11 日
・川崎 CLUB CITTA’

前回の Vol.2 から半年、nonLinear Metal DynamiX (NLMDX) EXTRA の Vol.3 の模様をお届けする。国内 HR/HM シーンの活性化に一役買ってきたシリーズイベント NLMDX が今回で 90 回記念ということで、クラブシーンから D_29 の参戦があったり、MC に里美黎 (FITONE) の起用があったりと、ジャンルミックスな様相も見せつつ、シーンの次を虎視眈々と狙う原石たちがそれぞれの輝きをみせつけた一日であった。いつか、あの日のCLUB CITTA’ が一つの転換点だったと語る日が来るや来ずや、運命の歯車に手を書けるのは一体誰であろうか。

■Opening Act : APOCALYPSE
最近あまり見かけなくなった、ステージに出てきただけで何かを感じさせる「雰囲気のあるバンド」がこの「大阪・堺の」 APCALYPSE だ。前回、NLMDX EXTRA Vol.2 での矢島舞依がそうであったように、この CLUB CITTA’ の広いステージともなれば、オープニングアクトという位置づけは、実力を測る意味ではあまり関係がない。結成 5 年、平均年齢21-22 歳と今回の出演者中での圧倒的な若さを武器にした彼らは、ARCH ENEMY 等を彷彿とさせる北欧直系のモダンエクストリームサウンドで、まだ日常の香りを残すフロアを一気に攻め立てた。テクニックは既に十分、MANSON (Vo.) を筆頭に物おじしないステージングで、新星到来の爪痕はここ川崎の地に色濃く残された。わずか 20 分、3 曲のステージながらその印象は鮮烈で、有り余るポテンシャルと今後の更なる覚醒を予感させるに十分なステージであった。次世代国産エクストリームシーンの一角として、全国に覇を唱える日も決して遠い日のことではなかろうと期待せずにはいられない。

1. ASRA (アスラ)
2009 年、仙台にて結成され、近年では既に活動を全国規模に拡大させている ASRA は、本編開始の最初のアーティストとして、CLUB CITTA’ ステージに登場した。自らを「エスニカル・ハードロック」と称するが、ハードロックだけではなく、メタルテイストも十分にあり、かつその間を頻繁に行き来するスピーディな楽曲の構成が持ち味と言えるだろう。紅一点・夢華 (Vo.) の張りのあるボーカルを全面に押し出してはいるが、それもバックを支える楽器隊のシュアーなサウンドがあってこそのものだ。
メリハリの効いた楽曲のアレンジ、観る者の中に何かを湧き起こさせずにはいられない快活なステージング、流麗なギターを中心にした技術的な面白さも十分に味わえるバンドサウンド、それらの噛み合わせのバランスが素晴らしい。そしてそこにクリアかつパワフルなボーカルが乗れば、ステージとフロアは一体となって曲中に描かれた情景に身を浸すことができるだろう。
この日のライブから、12 月、1 月 (ワンマン) と、三ヶ月連続の予約特典音源付ライブを展開している

2. WINDZOR (ウインザー)
姫路が誇る「クイーン・オブ・マシンガントーク」こと Kinoppy (Vo.) を擁するシンフォニックメタルのベテラン WINDZOR。予想に反して (反してない?) いきなりフロアを煽る構成で会場の空気を味方につけたのは積み上げたキャリアのなせる業か。長年に渡り国産メタルシーンの一角を担ってきた彼らについて、ややもすると Kinoppy のトークや陽のキャラクターの部分がクローズアップされがちだが、それがキャラクターとして認知されているのは、彼女が芯のあるボーカリストで、一級品のステージアクトであるからにほかならない。また彼女を支える楽器隊も、案外シックな楽曲をソツなく展開し、テクニカルなフレーズを何事もなかったかのようにこなしてしまう力量があるタイトなバンドということにもぜひ注目していただきたい。そしてそれを踏まえた上で人は言うのだ。「なんだかんだ言って、やっぱ Kinoppy ってすげえよな」と。
さはさりながら、今年 7 月、東京・吉祥寺CRESCENDO でのワンマンライブで 3 時間かけて、14-15 曲しか演奏せず、残りの都合 1 時間強はトークをしていたというWINDZOR、今日は演奏多めでしたよ! 深紅のドレスをまとった Kinoppy は、ステージ中を片時も足をとどめることなく動き回り、AT THE GATES の TOMAS LINDBERG バリの、間断なくフロアにリアクションを要求することでコミュニケーションを図るスタイルだ。彼らのライブを見るたびに思うことは「WINDZOR のライブは実に楽しそう」ということだ。変に力むこともなく、ただひたすらにライブ演奏することを楽しむバンドと、その空間を心から愛するファンとの絆は美しい。

3. 天燐 (テンリン)
静岡産メロパワの職人集団、もはや説明不要の徹頭徹尾ヘヴィメタル、それが天燐だ。日本語メロディックパワーメタルの極北へと着実に近づきつつある彼らのステージは、今回も圧巻の一言であった。あまりにもパワフルな、叫びにも似たハイトーンボーカルと、界隈でも出色の職人集団である楽器隊が奏でる怒涛のピュアメタルサウンドは、良い意味での暑苦しさに満ち溢れており、メタラーなら誰もが胸に抱くカタルシスをかきたてずにはおかない。
NLMDX ではすでにおなじみとなった YOSSY (Vo.) の、空間ごと殴り倒さんとするばかりの、全身全霊をこめたステージングは今回も健在で、その肉迫感については、国内ではすでに比肩する者も少ないであろう。
天燐の何が素晴らしいと言って、高度なスキルを持つ職人集団でありながら、5人全員が、暑き魂のライブアクトであることだ。やりようによっては、フロア視線はボーカルのみに集中させ、その猛火のごとき統率力で空間ごと引き回すことも十分に可能なのだろうが、そこはあえてのメタル魂。メンバー各人はテクニカルなフレーズを確実に繰り出しながらも、フロアへのアピールを怠らない。そしてそこにオーディエンスの熱気が加わり、かくて熱帯雨林のようなヘヴィメタル空間が出現するのだ。天燐をジャンルでくくる際に、元来パワフルであるべきメタルという音楽ジャンルに、さらに「メロディック」と「パワー」がついている意味を、今回体感した人は他の人にも伝えてほしい。今回見逃した人は、今後のライブでぜひ味わってほしい。音が五臓六腑に染み渡るという意味がわかるであろう。

4. D_29 (ディー・トゥエンティーナイン)
90 年代にヒップホップとロック・メタルが融合してラウドロック、ニューメタルが生まれたり、R&B 方面からの転向してこちら側に来るミュージシャンが珍しくなくなったことで、ロックにダンスミュージック的な要素が入ることも近年では増えた。また、 BABYMETALが (アイドルベースの) ダンスを武器の一つとして世界を席巻したとはいえ、いまだHR/HM 界隈にとって、ガチの「クラブミュージックシーンを背景にしたダンス」というのは縁遠いものであることには変わりがない。
そこへもってきて今回 D_29 の参戦は非常に興味を惹かれるものがあった。普段は「ダンスアーティスト」として作詞作曲振付プロデュースをマルチにこなすアーティストであるとのことだが、今回はバンドを率いてのダンサー & シンガーとしての登場だ。その肩書を背負って nonLinear “METAL” DynamiX と題された会場に来た彼は、誰よりもアウェイであること感じていただろう。しかし、ライブが始まってしまえば、ラウドロック・エモテイストにアレンジされたバンドサウンドをバックに、案外親しみやすそうな外見と小柄ながらキレのあるムーブで徐々にフロアへの浸透を拡大させていった。デビュー曲 “Pandemic SHOCK” を経て、終盤に差しかかる頃にはオーディエンスのリアクションも上々であったように見受けられた。
かつてない要素をふんだんに取り入れたステージに魅せられたオーディエンスもいるだろうし、刺激を受けた出演者もいることだろう。今後、彼が真にジャンルレスなアーティストになるとしたら、今回のステージが嚆矢となることを願う。

5. CREA (クレア)
シンプルな 4 ピースの、メタル色はかなり薄いガールズロック。最初のワンフレーズでまず気づかされるのは、YouTube 等での MV で見受けられたキュートでガーリーなポップロックテイストだという印象が、面食らうほどに覆される彼女らのタイトでパワフルなサウンドだ。オフィシャルサイトで確認できるのだが、2011 年の活動開始以来、ライブ本数はかなり多めで、今年だけでもこの日で既に 64 本目という、叩き上げのライブバンドであることを思い知らされた。現在までに 280 本を超すライブを重ね築き上げた、彼女らの確固たる信念にも似た太いサウンドは、スリリングでドライブ感があり、ファンのみならず、例え好みではなかったとしても会場に居合わせたオーディエンスの心を掴むには充分魅力的であったろう。
コンスタントなリリースをしながらも、主軸をライブ攻勢に置いて獲得したステージでの振る舞いは、曲が完全に体に入っており、出し入れ自在、縦横無尽のアピールを繰り広げた。
HR/HM 路線の本イベントであるが、その中で王道ロックサウンドの CREA が「こういうライブが見たかったんだ!」という熱量に満ちた快演をしてみせたことは、痛快ですらあった。ガツンとクる演奏とともに、コーラスワークがバッチリ決まっていることも印象的で、この日最後に演奏された「君のそばで生きていくこと」のドラマ性を否が応でも高めていた。
この日会場に居合わせて初めて彼女らのステージを見た人も、音源は耳にしているがまだライブでの CREA を見たことがない人も、ぜひ今後のライブに足を運んでほしい。このサウンドはクセになる。

6. 矢島舞依 (ヤジママイ)
世に「男子三日会わざれば括目して見よ」と言うが、いわんや「女子六ヶ月会わざれば」、である。前回 NLMDX EXTRA Vol.2 でオープニングアクトを務めた時も、すでに好演であったのだが、当時はバンド体勢に移行して間もない時期で、清冽さと初々しさが同居した状態であった。しかしその後の半年弱の間に、東名阪ツアーを経て経験を積み重ねて CLUB CITTA’ に再来した彼女の姿は、すでにバンドのフロントパーソンとしての地位を確立しており、清冽さ、可憐さの中にも、芯の強さが交錯するという、怪しくもさらに魅力的な存在へと格段の成長を遂げていた。
ステージング自体は、それほどワイドに動き回るというものでもないが、それを補って余りある抜群の歌唱力には、シャープな声質でありながら重厚感さえ漂い始めており、ステージから流れ出すフロアへの支配力という意味でも、前回とはもはや別人かと思えるほどだ。
四人編成のメタリックな音楽を奏でる集団としての「矢島舞依」として見た場合、バンドとしての完成度の向上、貫通力のあるボーカル、それらが一体となったオーディエンスへの訴求力。あらゆる方面での完成度の向上が著しく、指先の動き一つ一つからさえも楽曲を彩る情景が描き出されているかのようであった。 今回のライブ中に2017 年 1 月のセカンドミニアルバムの発売が告知されたが、そちらも是非期待してチェックしていただきたい。

7. SKYWINGS (スカイウイングス)
関西ではMinstreliX と並んで国産メロディックスピードメタルの両翼を担うとされる、SKYWINGS が満を持して CLUB CITTA’ のステージ登場。今回の出演者の中で最もオーディエンスの熱が高かったと思われるのが彼らだ。現在のバンド構成としては、ボーカル・ギター、ベース、キーボード、ドラムの 4 人編成に同期を加味したものだが、ボーカルを取る時はギターをほとんど弾かず、同期でギターを流すという、ギタリストがボーカルをする兼任と言うよりは、ギタリストとボーカリストを目まぐるしく行き来するというあまり見かけないスタイルだ。ボーカルはマイクをスタンドに立てない RACER X のジェフ・マーティンばりのインカムスタイルだ。おかげで立ち位置が固定されずに、ステージを左右に動き回ってのステージとなり、この手のテクニカル志向のバンドにありがちな、黙々とテクニカルな演奏をするだけの状態に陥らず、見た目にも華やかなステージングであった。
彼らのことを知らなくてもメタラーであれば “SKYWINGS” という名前を聞けば「メロスピなのかな」と想像できてしまいそうだが、その予想と期待を裏切らないテクニカルかつ華やかなメロディ、仰々しいアレンジ、速弾き主体のギターソロ、クワイアを大きくフィーチャーしたヴァースと、どこを取ってもメロスピだ!と断言できる楽曲の連発であった。最後にはキラーチューン “ANGELS SKY” をオーディエンスと一体となって大合唱して終幕。ファンには大満足のステージであったろうと思われる。

8. BLOOD STAIN CHILD (ブラッド・ステイン・チャイルド)
かつて「トランス・メタル」を提唱して、国内に多数のフォロワーを生み出した BLOOD STAIN CHILD (BSC) が新メンバー SAIKA (Vo.)、Yakky (B.) を迎えて新体制を構築。
ライブシーンへの復帰を待っていたファンもいるだろうし、二代目以降ボーカルが女性であった時代が長らく続いたことから、男性ボーカルに回帰したことでバンドが変質してしまうのではないかと不安を抱いていた人もいるかもしれない。しかしこの日のステージを見る限りでは、BSC は BSC であって、むしろ本来の姿を取り戻した感さえあった。
Yakky はテクニカルかつシュアーなプレイでボトムを支え、SAIKA は破壊力のあるスクリームをメインに、フロアを支配しにかかっていた。元々個々の技量は高く、職人集団の趣があったが、既に新体制になってから幾度かのライブをこなしているだけあって、そのステージには何の不安要素も見られなかった。タイトかつパワフルに効く GAMI のドラムの上に乗る弦楽器隊と同期とボーカルと、各パートが役割を十分に役割を果たして結果として放たれるサウンドは、「やはり BSC」と見る者を納得させるものであった。アプローチとしては従来からのメロデス方面であるが、SAIKA のシャープなスクリームにより、本来の破壊力を取り戻した感がある。一方で、随所にコーラス、シンガロングパートを盛り込み、フロアからのリアクションを求めるアレンジは流石と言える。職人集団でありながらというか、職人ゆえにというか、演奏には余裕が感じられ、各人が視野を広く保っているために、SAIKA が各パートに絡みに行けば、相応のリアクションを見せるという、見た目にも楽しめるような貫禄のステージであった。

  Report by JUN (ex.XECSNOIN)

■プロフィール
【JUN】 ヘヴィメタルバンド XECSNOIN (ゼクスノイン) のベーシストとして 2001 年から音楽シーンに参入する。現在は Sirent Screem、MaKORN にて活動中。00 年代後半より SNS 上でで個人名義でコラム執筆を開始。2015 年から、物書きを本格的に始める。在独経験を基にした独自の観点で、音楽はもとより、比較文化論から政治経済に至るまで多岐にわたり論評を展開中。その独特のわかりやすさ重視の文体が好評を博している。趣味はモータースポーツ在宅観戦。 
 
※個人ブログ  ⇒ 『長文御免』