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|| LIVE REPORT ||

【ライブレポート】nonLinear Metal DynamiX in CLUB CITTA'

・RYUMEI Presents
 nonLinear Metal DynamiX 2016
 Extra Edition Vol.2
・2016 年 5 月 6 日
・川崎 CLUB CITTA’

さて今回は、先日川崎 CLUB CITTA’ で開催された nonlinear Metal DynamiX (NLMDX)の拡大版、Extra Edition Vol.2 の模様をお届けしたい。全国から集った総勢 10 組が、普段とは一味違う CLUB CITTA’ の大舞台で、約 7 時間に渡って熱演を競った。

■矢島舞依 (ヤジママイ)
いまだ男性優位な傾向のあるロック、メタルシーンにおいて、女性ソロアーティストでオープニングアクト、となると、どうもワンランク低く見られがちかも知れないが、そこはあえての NLMDX Extra Edition。このステージに立てることが既に実績と実力の証であり、彼女も他の 9 組に何ら劣ることのないアーティストである、ということだ。
それは何よりも彼女のステージが自身で証明した。キュートなルックスと一見アイドルと見まがう出で立ちながら、その中身はしっかりとしたロックボーカリストであって、トップバッターでありながら物おじしないステージングで会場の空気の立ち上げに成功したと言っていいだろう。
7月にはレコ発を記念した東名阪ツアーも決定しており、メタルファンは、その目で確認して欲しい。

■戦慄の女神 (センリツノアテナ)
KAWAYAN (B.) と CRAZY (Dr.) による、クリーンとデスの女性ツインボーカル・バンド。今回はなんと Vo × 2、Gt × 3、Key、Ba、Dr という 8人の大所帯で登場。往年のジャパメタをベースにしたスピード感のある楽曲とアットホームでにぎやかなステージに終始した。今回でメンバーの大半が入れ替わり、6 月には新体制でまた動き出すということなので、彼らの新展開に期待したい。

■REASTERISK (リアスタリスク)
早くも本日の目玉の一つの登場。
前回ライブを見たのが先月 4 月のことで、そのライブについては既に当コラムでも記載したので、お時間ある方はどんな様子だったのか是非バックナンバー(REASTERISK ワンマン)を確認していただきたい。一ヶ月ぶりとなる REASTERSIK は完全に「次の段階に入った」と言っていいだろう。
つまり、先月のワンマンが始まった時とは、すでに別の次元にいるということだ。
それはとりもなおさず、ボーカル NANA の成長とスケールアップに帰結する。CLUB CITTA’ の広いステージを端から端までワイドに使った奔放なステージング、情感あふれる伸びやかなボーカル、若干のトラブルはあったものの全体的にはステージごとにタイトさを増していく楽器隊。そして NANA による空間の支配とフロアの操縦。これに没入できるREASTERISK ファンは幸せである。新曲 “Brand-new Frontier” もこれからの彼女らを示唆する良曲だ。極力客観性に努めて見ても 30 分ステージでは足りない、もうしばらく見ていたいと思わされた。

■Rosario Ark (ロザリオ・アーク)
滋賀を拠点とする 4 人組。先日名古屋でのワンマンを成功させ、さて次に狙うは関東圏というところだが、すでに東京圏にも一定数のファンがいることが見受けられた。ワンマンライブをこなすバンドともなれば、基本的な演奏力には問題がないのが当然で、若干機材トラブルでギターの音が断たれたこともあったが、楽曲の中核であるギターが途切れても乱れない他3名の実力と、特徴のあるコーラスワークが逆に浮き彫りになった形だ。さらにトラブルを逆手に取った MC もさすがと言えよう。楽曲的には、オーセンティックなヘヴィメタルとジャーマン系のパワーメタル的要素を、存在感のあるボーカル YUE の歌唱でまとめあげるという、日本人には耳になじみやすいスタイル。7 月 17 日 (日) には東京・吉祥寺CRESCENDO にてワンマンライブがあるとのことなので、東京方面の方は、既知のファンならずともぜひ足を運ばれたい。

■Ghost Cries (ゴースト・クライズ)
考えてみれば、キャパ 1,000 超の空間でシンフォニックデスが見られるというのは、なかなかレアなことである。しかも国産アーティスト。ライブハウス以外でこの手のバンドが観られると言ったら、あとは LOUDPARK くらいだろうか。この日彼らを見た方は、貴重な経験をしたと周囲に自慢していただきたい(笑)
先月新ドラマ―が加入し、ようやくラインナップの完成を見た Ghost Cries であるが、従前からの圧倒的ド迫力サウンドは今日も健在であった。というよりむしろ、全体的なアンサンブルが固まって来て、空間を埋め尽くさんとする音の洪水の中に、むしろ不思議なキャッチーさを感じるようになったのは私だけだろうか。
そしてこの日の特筆点の一つ、暗黒女王 Coco (Vo) に言及せねばなるまい。楽曲がトレモロリフやブラストビートを多用した、ただでさえ音数の多い構成で、それ自体でかなり面的なサウンドになっているのだが、それを踏み越えて空間ごと切り裂くようなスクリーム、地下から這い上るようなグロウル、女性の情念をほとばしらせるようなクリーンの絡み合うボーカリゼーション、そして意外なユーモアがにじみ出る MC。それらを空間に現出させようとする意志の強さと、実際に表現する力量の高さとを存分に感じさせた。この日この瞬間のステージは Coco の支配下にあったと確信を持って言える。

■天燐 (テンリン)
静岡を拠点とする実力派パワーメタル。既に何度かライブを目にしたことがあるが、この日の彼らのステージはまさに圧巻であった。パワフルな演奏、ライブ映えする楽曲、自在なまでに楽曲を把握したメンバーの一体感が、ステージからフロアに溢れ出して、メタラーに至福の時を与えてくれる。中でも YOSSY (Vo) の男汁あふれる熱演は、もはやメタルボーカルというより、戦場に赴く戦士を鼓舞する部隊長のような存在感であった。まさにメタルど真ん中、メタルとはこれでよいのだと思わせてくれる怒涛のハイパフォーマンスであった。
彼らの特徴として、アジアまたはエスニック調を取り入れた衣装なども含め、メタルはメタルにしても、レザーとスティールの剛直一本のメタルとは違って、柔と剛を併せ持つ柔道家のようなしなやかな強さのアピールを感じ取ることができた。なお、この時点 (6 組目)で言えば、サウンドバランス、音質はここまでで一番であった。楽曲が鳴っていることが当たり前と感じさせることの凄さ、そう思わせる演奏技術の高さを感じ取っていただければ幸いである。

■SeRafiL (セラフィル)
バイオリンをフィーチャーした異色の 6 人体制で、懐かしめのポップロックとハードロックを中心に、前後の出演者とは一味違った落ち着きのある空間を作り上げたのがこのSeRafiL。結成1年未満ながら、音の分離の良さと演奏の自在さは出色。それもそのはず、メンバーのキャリアを見れば、各界の実力派が集ったある種のスーパーバンド的な意味合いのあるのが彼らだ。安定感と透明感のあるサウンドはライブというよりは、むしろコンサートと言った方が適当だろうか。ある意味爆音上等の今回の出演者の中にあって、清冽と言う名の華を添えた感が印象的であった。

■GUNBRIDGE (ガンブリッジ)
かつて Galneryus のボーカリストであった YAMA-B が AXBITES を経て、今メインの活動の一つとしているバンド、と言えば会場にお越しになれなかった方にもおわかりいただけるだろうか。サウンド的に同系統の天燐と比較すると、彼らの方がシャープな印象を受けるが、それはとりもなおさず YAMA-B のクリアなハイトーンによるものだろう。絢爛たるキャリアを誇るこの圧倒的な存在感のボーカリストは、もはやフロントマンとして一介のレポーターがあれこれ文句のつけられようはずもない。この導かれる感じはどうだ。
YAMA-B 先生!と言いたくなるような安心感のあるステージ。天燐の YOSSY が隊長ならば、YAMA-B は指導者だろうか。サウンドに関してもこのバンドには今さら何か言うこともないのだが、やっていることが全部聴こえるということが、どういうことかというのは、オーディエンスにとってはむしろ当たり前のことなのかもしれないが、楽器でロックに取り組んだことのある人にとっては、その意味と価値は重大である。このハイレベルなバンドにはこれからも長くアクティブに活動を継続していただきたものだ。

■Imperial Circus Dead Decadence (インペリアル・サーカス・デッド・デカダンス)
ライブハウス界隈だけを見ているとわかりづらいかもしれないが、昨今の DTM の進化により、いわゆるところの同人系音楽サークル、同人系バンドのクオリティの高まりには目を見張るものがある。その中で極限の退廃と刹那的な美を嵐のような轟音で包み込んだのが、この Imperial Circus Dead Decadence (ICDD) だ。音源は既に私も耳にしていたので、そのクオリティの高さについては認識済みであったが、もともとそれほどライブ活動を重視していないのか、ライブで見る機会を得たのはこの日初めて出会った。この日暗黒系で双璧を為す存在であった Ghost Cries が、比較的王道のシンフォニックデスだとすると、こちらは同じくシンフォニックデスベースながら、V 系、ゴシック、ゴア、エモコア系、と雑多な要素を同時に封入した感がある。トリプルボーカルを含む 7 人体制でこの日登場した彼らのステージは、個々人の役割分担がはっきりしていて、かつそれぞれがその役割を高いレベルできちんと果たしていて、音にキレがあり、観る価値の高いものであったと言える。
この日、オーディエンスの濃度と飢餓感が最も高かったのが彼らで、曲のタイトルコールをしただけで、期待感に満ちたリアクションが上がったのはここだけであったということは特筆しておきたい。
ステージが進行するにつれてキャッチーな要素を含む曲になるように聞こえたが、もし耳が飽和しないようにとそこまで計算されていたとしたら、恐れ入った話である。

■LIGHTNING (ライトニング)
忍者メタルを標榜するが、忍者らしくないことを自ら MC で暴露するフレンドリーなステージを展開したのが、この日のトリ、LIGHTNING だ。現 THOUSAND EYES の KOUTAがかつて在籍していたことでご存知の方もいるかもしれない。ステージに幟を立てたり、衣装も戦国・忍者風なのだが、立ち居振る舞いがどうにも大仰なメロスピ、ジャパメタ風なため、とても隠密部隊の為しようとは思われない(笑)。とはいえ、曲にしてもステージングにしても、いかにもなツボは押さえてくるし、サウンドバランス、演奏ともに、そのへんのメタルバンドでは到底太刀打ちできないほどにクオリティの高いものであった。ことメタルに関して言えば、漫画的に大仰なこと、極端なことは決して悪いことではなく、むしろ彼らのような存在が、メタル初心者にとっての頼もしい引導者であることは、メタル界隈に身を置く者であれば自身の経験に照らすまでもないことと思う。

■総評
この日総勢 10 組、出演者数で言えば 50 人以上が、約 7 時間に渡り各々の個性を激しくかつ流麗に繰り出したわけだが、その中には世が世ならそれこそ CLUB CITTA’ ではそれぞれ単独公演でないと観れなかったようなクオリティのものもあった。それが幸か不幸か一日にして観ることができたということは、好きな人にはたまらない一日であったろう。
近年音楽シーンの衰退が言われると同時に、ライブシーンの活性化も並行して言われるが、つまりライブハウスシーンのクオリティの劇的な向上を一面で意味するとも言える。その一端の発露がこのイベントであったということは、この日この会場に集ったオーディエンスにはご理解いただけたと思う。
近年技術の発達により、楽器が弾けなくても音楽を制作できうる時代になったが、やはりライブ演奏に優る真実はない、ということを一人のライブ好きとして申し上げておきたい。
終演後、今年 11 月に再度ここ CLUB CITTA’ にて nonLinear Metal DynamiX EXTRA Vol.3 が開催されることが発表されたが、またしても高品質ライブサウンドに乞うご期待!というところである。
 
 

Report by JUN (ex.XECSNOIN)
Photo by RYUMEI

■プロフィール
【JUN】 ヘヴィメタルバンド XECSNOIN (ゼクスノイン) のベーシストとして 2001 年から音楽シーンに参入する。現在は Sirent Screem、MaKORN にて活動中。00 年代後半より SNS 上でで個人名義でコラム執筆を開始。2015 年から、物書きを本格的に始める。在独経験を基にした独自の観点で、音楽はもとより、比較文化論から政治経済に至るまで多岐にわたり論評を展開中。その独特のわかりやすさ重視の文体が好評を博している。趣味はモータースポーツ在宅観戦。 
 
※個人ブログ  ⇒ 『長文御免』