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|| LIVE REPORT ||

【ライブレポート】 REASTERISK

・REASTERISK 1st album "Gene to Survive" release party ONE-MAN LIVE ~
REINCARNATION vol.6~ NANA's birthday special
・2016 年 4 月 16 日
・吉祥寺CRESCENDO

2012 年 12 月に女性ボーカリスト “NANA” が加入して始動した REASTERISK (リアスタリスク) は、2013 年 9 月にミニアルバム “HADES” のリリース後、各地での精力的なライブ活動で着実にファンベースを固め、2016 年 4 月 6 日にファーストアルバム“Gene to Survive” をリリースするに至った。
彼らの特徴は、基本的にはキャッチーなメロディと、ヘヴィでありながらエクストリームには走らない線引きの潔さ、そしてシンプルでありながら絶妙にフックの効いた飽きの来ない楽曲、と言えるだろう。
 
音源自体のレビューは次回以降に置くとして、ファーストアルバムリリースに伴うレコ発イベントとしてのワンマンライブは、バンド側にしてみればチャレンジングな要素をともなうと思っていた時期もあったようだが、ふたを開けてみれば、告知開始早々にソールドアウト、当日も満員御礼の大盛況となり、彼らの実力を内外に見せつけることとなった。
 
ステージから発せられる彼らの音楽は、観る者聴く者にいくつかのことを教えてくれる。シンプルだが叙情感にあふれたアンサンブルは技術的高度さを凌ぐということ。彼らの音楽について、懐かしいと言う評価があることは、それは安心して身を委ねることのできる王道のバンドサウンドであるということ。そして何よりも、心を撃つメロディは、どんな理論的高度さにも優るということ。
 
東名阪を中心とした少なくない本数のライブを経て、彼らは確固たるバンドサウンドを構築することに成功した。そして迎えた今日の、バンド自体としても、メンバー個人それぞれとしても初のワンマンライブ。ステージ上の 5 人にはそれぞれ期するものがあったと思うが、全体的に見て、それはいかんなく発揮されていたと言えよう。開演直後には若干のぎこちなさがあったものの、エンジンがかかってしまえば、いつもの、そしていつも以上の躍動感にあふれたサウンドをフロアいっぱいに響き渡らせた。中盤のアコースティックコーナーでは、アコースティックギター、コントラバス、ボーカルのトリオ編成で “Gene to Survive” から 3 曲、”HADES” から 1 曲を披露し、楽曲の新たな側面と、何より NANAの抜群の歌唱力をオーディエンスが堪能するには充分の演出だったと言える。
 
もし、オーディエンスの中に REASTERISK に、通り一遍のただ楽しいだけのバンドではない匂いを感じる人がいたとしたら、その感覚はおそらく正しい。REASTERISK のもう一つの特徴は、その歌詞の暗さ、孤独感にある。NANA の歌う歌詞は、むせ返るほどの寂寥感で満ち満ちている。しかしそれを意外と言うことはできない。ミニアルバム “HADES”から最新作の “Gene to Survive” まで一貫して、その寂寞かつ荒涼とした孤高の精神性は、歌詞カードを見れば一目瞭然である。NANA は愛嬌のある笑顔で、ポップと言っていいほどのキャッチーなメロディに、底知れぬ闇を込めて歌っているのだ。楽曲自体が持つヘヴィネスと軽快さの対比、メロディと時にスクリームを交えるボーカリゼーションのコントラスト、そして NANA 自身がその身に常に内包する陰と陽の葛藤が、REASTERISK を、一聴どこにでもいそうで、意外なほどに代替候補が見当たらない不思議かつ魅力的なサウンド媒体たらしめていると言えよう。
 
そういう意味においては、やはり REASTERISK のステージは、サウンドの原動力でありリーダーの Cota (Dr)、ジャズ畑出身というキャリアを活かした流麗なフレーズでバンドのボトムラインを彩る KT (B)、Rammstein を彷彿とさせる独特のステージングと、派手さはないがシュアーなプレイでアンサンブルの一翼を担う MKT (G)、メインソングライターでありヘヴィネス方面だけでなくカッティングなども器用にこなす Atsusix (G)、そして紅一点、華奢な外見とは裏腹にパワフルな声でサウンドの最前線を取り仕切る NANA (Vo)の 5 人でなくてはならないという思いは、この日もはや確信に近いものとなった。
 
ステージも後半に差し掛かった頃、NANA が数年にわたり憧れ続けて、しかしすれ違ってきた、バンドの前身の “inchworm” のボーカル “carey” を交えての、”inchworm” 時代からの一曲 “Engraver” を歌い終えた NANA が意外なことを口にした。
 
彼女の歌詞の暗さは、その卑屈なまでの自己否定感と、それについて安易な同情など歯牙にもかけない頑固さから織り出されるものであるのだが、その彼女から「carey さんはinchworm のボーカルだけど、REASTERISK のボーカルは私だ。今はそう思える」というようなコメントが飛び出した。
 
そして変革の時が訪れた。
ステージを流れる空気の純度が俄然高まり、NANA が背負う照明の照り返し、マイクに吸い込まれる息遣い、あらゆるものの輝度が一瞬にして高まった。元々十分に伸びのあるボーカルは、次の瞬間、天井から降る福音のごときものとなり、それに伴ってドラムから一筋の大きなうねりが繰り出された。それを受けた弦楽器が今までよりもう一歩粘りのあるサウンドを紡ぎ出し、そして奏でられた代表曲 “vacant utopia” は、今まで披露されてきた中でも、段違いの輝きを放っていた。
 
歌詞は相変わらず、底の見えない穴のような絶望感に満ちているものの、それを歌うNANA 自身の中に自身を肯定する感覚が新たに一筋生まれた。その一筋が大きな隔絶の瞬間を作ろうとしていた。一人のボーカリストが、自身の肯定感を得ることで、今この瞬間に次のステージに足を踏み出したのだ。
 
ライブ演奏をするロックバンドには、ちょっと見ない間に急激に成長を遂げるものがいるし、何か環境の変化を受けて劇的に好転したステージを見せる者がいる。しかし、一つのライブステージの進行中に、その転換点を迎える者は、そうはいない。それは瞠目すべき事象の発現であり、また今後彼女が踏み出せる世界が一気に地平線まで広がったということだ。
そしてそれはとりもなおさず REASTERISK が無限の可能性を手にしたことを意味するのであって、その感慨は彼らの今後に対する期待感の劇的な高揚となって、私の胸中に渦巻いた。
 
とはいえ、今夜彼女の胸に差し込んだ一条の光は、彼女が抱える内なる闇を一気に払底するなどというものでは到底ないだろう。しかし、今この数舜前まで泣きながら呪詛のような影がまとわりついた歌詞を振りまいていた彼女が、ひょっとしたら歯を食いしばったら涙を止めることができるようになるかもしれない。その可能性を見ただけでも、今夜のステージは必見のものであったと、巷間に知らしめるべくこのレポートを記すものである。
 
仮にこの一件が個人的な思い込みによるものだったとしても、終演直後のオーディエンスの表情を眺め渡せば、今夜の REASTERISK のワンマンライブが、吉祥寺CRESCENDOに集った彼らの期待感を確実に満足感へと変えたことは明白で、バンドが自らの手で自らをまた一つ次の段階へと引き上げたことの大きな証拠と言える。
 
一つのステージが終わり、明日からまた次のステージへとバンドは足を踏み出していくことになるわけだが、そのたびに彼らは、大きな労力を費やしたとしても、それを乗り越えていくことだろう。そしていつしか、自らの力で作り上げた大きな地平に立つことができると、私は信じる。たとえ光と闇を抱えたままであっても、彼らの優れたアンサンブルの足跡を世界に刻みつけるために。
 
 

レポート:JUN (XECSNOIN)
REASTERISK ONE MAN LIVE Dijest 2016.4.16 @CRESCENDO  by TEAM A'THRASH

■プロフィール
【JUN】 ヘヴィメタルバンド XECSNOIN (ゼクスノイン) のベーシストとして 2001 年から音楽シーンに参入する。現在は Sirent Screem、MaKORN にて活動中。00 年代後半より SNS 上でで個人名義でコラム執筆を開始。2015 年から、物書きを本格的に始める。在独経験を基にした独自の観点で、音楽はもとより、比較文化論から政治経済に至るまで多岐にわたり論評を展開中。その独特のわかりやすさ重視の文体が好評を博している。趣味はモータースポーツ在宅観戦。 
 
※個人ブログ  ⇒ 『長文御免』